月夜に舞う桜華
「――――怖かった。」
もし、このまま目が覚めなかったらどうしよう。
微かに上下している胸だけが椿は生きている、大丈夫だと思える証拠だった。
1日経っても2日経っても目が覚めず、昌達が変わるから休めと言ってもその間に何かあったらどうしようと考えてしまって片時も離れることをしなかった。
それが一月も続いて、目が醒めたあの日、俺はようやく呼吸が出来た気がした。
「もう二度とあんな思いは嫌だからな………」
「………ん」
朔夜の背中に手を回してあたしからも抱き締める。
あぁ、あたしの居場所は朔夜になったんだと思った。
朔夜の気持ちがあたしに流れ込んでくる。とても心地が良い。
「元気になったら、お礼に沢山朔夜の言うこと聞くから」
今のあたしにはそれが一番出来る恩返しだ。