月夜に舞う桜華
それは、ちょっと困る。
というか恥ずかしい。
「あの、朔夜」
「なんでも言うこと聞くんだろ?」
「(………言質を捕られた)」
あたしの、負け。
何時も通りに見えて、あたしの数歩前を歩く朔夜の背中はとても生き生きとしている。
あんなに喜んでいる姿に水を差すことはあたしには出来ない。
(ま、いいか………)
朔夜が嬉しそうなら。
色々、迷惑もかけたしな。
フッと朔夜を追いかけながら歩いていて、あたしの心は今までにないくらいに軽く、そして満たされていた。
あたしも、柵から解放されたのだ。
「椿、急げ」
「あたし、まだ怪我人」
労って、と言えば、朔夜はだったな、と頬を掻いた。
それがまた面白くて、あたしは笑う。