月夜に舞う桜華



「いや……痛むのか?」


心配そうな表情にあたしは小さく笑う。


「大丈夫。痛みはない」

「嘘つくな」

「朔夜に嘘はつかない………朝御飯、何食べたい?」


腕捲りをしながらあたしは微笑む。


「………やっぱ俺がやる」

「今日は、あたしが当番じゃん」


それに動かなきゃ。


朔夜は不満そうだったが、諦めて小さく「卵焼き」と答えてくれた。


「了解」


笑って頷くとあたしはゆっくりとした足取りで寝室を出て、台所に向かう。


冷蔵庫で材料を見繕って取り出す。


台所に立って、手を洗いながらあたしは、口を開く。


「…………朔夜」

「、」


肩越しに振り返ると冷蔵庫に寄りかかるように立っている朔夜に苦笑する。


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