月夜に舞う桜華
初めて桜姫に逢った時、今にも消えてしまいそうな位に儚い印象を持ったことを覚えている。
その頃の俺は、親と衝突する毎日で、その苛立ちを解消させるために喧嘩ばかりしていた。
人を殴り、殴られて。
そのやり取りが苛立ちを和らげてくれていた。その為なら自分がどうなろうと気にもとめなかった。
喧嘩ばかりの毎日が続いて、家にも帰らなくなり、ふらふらしていたある日、俺は桜姫と出逢った。
その日は、前日に喧嘩した奴等が報復にきやがって派手に喧嘩した後だった。
『チッ……くそが……人数多けりゃいいってもんじゃねぇぞ………』
ズキズキと痛みを訴えてくる横腹を押さえながら俺はゆっくりと道を歩いていた。
時折咳き込みながら、呼吸する度に痛みを訴える身体に眉を寄せる。