月夜に舞う桜華
そのまま腕を引かれて朔夜との距離が縮まる。
「俺は、諦め悪いから」
「………っ」
耳元で囁かれて反射的に空いている手で耳を押さえた。
するりと手が離れていく。
「また明日な、椿」
ヒラヒラと手を振って朔夜は帰っていった。
「……………」
ジッとその背中を見つめた後にあたしは小さく笑う。
(へんな男)
朔夜とは反対に足先を向けて歩き出す。
下らない、くだらない、クダラナイ。
(勝手にすればいい)
あの男が何を考えているか何て興味が沸かない。
所詮戯言だ。
(クダラナイ………)
ハッと笑ってあたしは玄関へと向かった。
ポケットの中で携帯が光っているのを勿論無視して。