月夜に舞う桜華
「なに」
「一人でどこ行くの―?」
「関係ない」
男達には一切目を向けない、足も止めない。
「可愛い子が一人で歩いたら危ないよ?」
優しい声で言っているけど、その裏に潜む魂胆にあたしが気づかないとでも思ってるのか。
残念ながら、その手には乗らない。
「ほっといて」
大概の連中はこう言えば諦める。
「チッ」
ほぉらね。
(ハッ、つまんない)
心の中で嘲笑ってあたしは屋上へ足を進めた。
屋上は、晴れにも関わらず誰一人いなかった。
(ラッキー)
誰もいないなんて素晴らしい。
鼻歌を奏でながら、あたしは、屋上のドアの屋根を登った。
ここなら、見つかることもあんまりない。