月夜に舞う桜華
目が、あった。
「怪我はない?」
ニッコリと微笑まれ、あたしはあれ?と思う。
もしかして、バレていない?
内心ばくばくだったのだが、一先ず安心した。
目の前にいる彼らは朔夜達以上に面倒な存在だ。
「いえ、ありがとうございました」
あたしは、早口に礼を言ってからそそくさとその場から退散しようとする。
バレていない今のうちに逃げていた方が良い。
本当に、厄介だから。
しかし、あたしの願い虚しく、彼は口を開く。
「ありがとうございました?………随分優しい声を使うようになったな?………桜姫」
「!」
ピシリと、固まった。
ニヤリとした彼は、紛れもなくあたしの知る彼―――司だった。
「だ、誰のことだか……」
「しらばっくれても無駄だぞ」
ぐるりとあたしを囲むように場所をずらす彼らに、あたしは逃げ場を失った。