月夜に舞う桜華
「それが良いんだけどな」
クスリと小さく笑い、朔夜が離れる。
「今、何した……?」
「ん?キス、だな」
軽い、な、と朔夜は意地悪い笑みを浮かべる。
苛っとしながら拳を握りしめる。
朔夜は気づかない。
「…………」
「深い方が良かったか?」
刹那、プツンと頭の中で何かがキレた。
「ふざけんな!」
「おっ……と」
「!?」
至近距離にいる朔夜の鳩尾を狙い拳を入れたはずだったのに、あたしの拳は紙一重でかわされてしまった。
予想外の事にあたしは激しく動揺してしまう。
「…………なぁ、」
朔夜は、うってかわって低い声であたしの耳元で囁く。
「幾ら、お前が皇蘭の総長だった桜姫でも、俺は、この手をかわせるんだぞ?」
「っ」
ギリッと唇を噛み締める。