王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

 ――怖がっているふりをして、いっぱい久我くんにくっついちゃえば?

 確かに、友人たちからそう言われた。

 くっつくどころの話ではない。

 震える足は前に出てくれず、ずるずると久我に引っぱられての移動。

 しまいには腰が抜けてしまい、出口どころか部屋までおぶってもらった。

 そして今は、恐怖を思いだし眠れないでいる。

「だからって床に寝ようとするんじゃない。部屋を明るくしてやるから、自分のベッドに戻れ」

「いろいろ思いだしちゃったので、もう無理です。今日はここで寝ます」

 部屋が明るくなろうと、目を閉じたら瞼に恐怖の光景が浮かぶ自信がある。

 誰かのそばにいないと、耐えられない。

 先手必勝。綾菜は身体に毛布をかぶった。寝てしまえば、強制的に戻されることはないはず。

「床に寝るなと言っているだろう。早く戻れ」

「嫌です。……今日は近くで寝させてください」

 自覚はないが、必殺の上目使いだった。

 ベッドランプの淡い光に照らされ、さらに効果は二倍増し。

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