王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

 なんだ、簡単じゃない。

 どうしてすぐに思いつかなかったのだろう。

「あのですね」

「却下だ」

 まだなにも言っていないに等しい。

 いくらなんでも、この却下は早すぎだろう。

「久我さん、聞いてください」

「聞かない。却下」

 こんなに頑ななひとだったかな。

 まだ魔王の件で拗ねているのかもしれない。

「魔王とは言わないようにしますから、私の思いつきを聞いてください。万事解決するはずです」

「魔王は関係ない。却下と言ったら却下だ。諦めろ」

 少しカチンときた。

 同室者なのだから、理解しあうために思っていることを伝えたり、相手の話を聞くことは大切。

 頭ごなしに断るというのなら、こちらも考えがある。

「……じゃあ、実力行使します」

 綾菜は、目の前にあるベッドのシーツをめくった。

 久我の身体を奥へ押して、自分も入りこむ。

「一緒のベッドを使えばいいんです。いいアイディアでしょう?」

 綾菜は満面の笑みを浮かべた。
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