王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
プチバカンス
一話
「とにかく、キラキラのひらひら。派手なのが一番」
「普通でいいんだ、普通で。というより、できるだけシンプルに。いや、いっそなしにするか」
何度目かのあくびが漏れる。
意見がまとまってから呼んでくれてもよかったのに。
「ロボも退屈だよね」
綾菜は、オブジェとして飾られている等身大のロボットに話しかけた。
アザミ寮の寮長である御影琥珀と副寮長の真坂純也はともにロボット同好会の主軸。
二人から競技会用ロボットの飾り制作を頼まれ、この部室を訪れてから早一時間が経過した。
堂々巡りの議論は、いいかげんうんざり。
「キラキラもシンプルも作れと言うなら両方作るから、もう終わってくれないかな……」
「そう? そうしてくれると僕うれしいなあ。キラキラはスパンコールとレースをいっぱい使ってね」
いつの間にか背後に真坂が立っていた。
真坂はたった今まで御影と議論していたはず。この素早い行動はなんなのか。
第一、美女ばりの美貌が近くにあると、かなり心臓に悪い。
「シンプルだといっても、校章は銀糸でいれろよ。手を抜くな」
真坂の隣には、こちらもいつの間に移動したのか御影がいた。
知的な美形ではあるが、眼鏡の奥から覗く瞳は鋭く迫力がある。