王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

 久我の親愛表現は、今では綾菜もお気にいりだ。大切だと言ってもらっているようで、すごく安心する。

「……不思議。胸のもやもやが消えちゃいました」

「どうした? 調子が悪かったのか?」

 心配顔で覗きこまれた。

 綾菜は小さく首を振って、自分から久我の胸へ顔を寄せた。

「そうじゃなくて。久我さんが、DVDを観るって思ったら、胸が苦しくなって。嫌だったのかな……。よく、わかりません」

 久我に触れられていると、すごく素直になれる。

 綾菜は思ったままを口にした。

「ったく、オマエは……」

 髪に、瞼に、こめかみに唇がおりてくる。

 綾菜はうっとりと目を閉じた。

「オマエの軽い一言は、下手なDVDよりずっとくるんだぞ。わかっているのか?」

 久我の言葉が、夢見心地の耳に小さく響いていた。
< 157 / 191 >

この作品をシェア

pagetop