王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

二話


「それ、初耳だよ……」

 カレーライスの上にたっぷりマヨネーズをかけながら、綾菜は力なく呟いた。

 昼休みのカフェテリア。

 ヨーロピアンガーデンを見渡せる極上席の確保に成功し、本来なら最高にご機嫌だったはずだった。

 なのに、今の気分は最悪もいいところ。

「アンタの耳は都合の悪いことを聞かないだけだろ? どの科でもオリエンテーションで説明されたはずだ」

 長い髪を束ね、理佳はラーメンをすすっている。

 麺は音を立ててが信条らしく、今日もずるずるの音が激しい。

「そんな衝撃的なことを聞いていたら、覚えていたと思うんだけどなあ」

 マヨネーズカレーをパクリと口に運び、綾菜は記憶を辿った。

 やはり覚えていない。理佳の言うとおり、嫌なことだから記憶から抹消してしまったのかもしれない。

 できることなら、今も忘れてしまいたい。

「ぶつぶつ言わない。決まりなんだから、仕方がないでしょ」

 レンゲを使わず、理佳はどんぶりから豪快にスープを飲みほした。

 モデルばりの美形がやると迫力がある。
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