王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
綾菜はぺこりと頭を下げた。
「勉強を教えてくれてホントありがとう。おかげさまで試験をクリアできました」
「確かに俺のおかげだな。お前のにわとり並みの脳に知識を詰めこむなんて芸当ができるのは俺くらいだ」
いくらなんでも鳥と同じ扱いはないだろう。
綾菜は理路整然と反論することにした。
「にわとりよりはましだよ。試験が終わるまではちゃんと解の公式も覚えていたもの」
「……それって、試験が終わったとたんに忘れたってことか?」
数学の公式なんて不快なものを、いつまでも覚えていたいはずがない。
嫌なことはさっさと忘れるのが持論。
「当然。公式のこの字も頭に残っていないよ」
御影の眉間の皺を思いきり深くした。
こめかみに四つ角が浮いている。
「……俺が苦労して教えたことを、即座に忘れるとはどういう了見だ」
「こ、琥珀、それはやめて。いやー」
首に腕が回され、ぐいぐいと絞められる。
隙をみせるとすぐにバックチョークをかけるのはやめてほしい。