王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
五話
「可愛い……」
部屋のドアを開けた瞬間、綾菜のこころはメルヘンの世界へ飛びたった。
「絵本の王子様がいる」
改装しつつも、古い洋館の趣を残した室内。
漆喰の壁が優しい白で部屋を包み、大理石のマントルピースを引きたたせる。
男性恐怖症のせいで、感動にひたる暇はあまりなかったが、綾菜は一目見た瞬間からこの部屋が気に入っていた。
――この部屋をもっと可愛くしなければ。
パッチワークのベッドカバーに、同じモチーフのクッション。さらに、たくさんのぬいぐるみ。
窓にはもちろん上飾りつきのカーテン。
綾菜はこの一ヶ月で部屋を乙女ゾーンに変身させていた。
「この部屋にぴったりの住人がいる」
綾菜は感動のまま呟いた。
自分のスペースだけでは、もの足りなくなった綾菜が久我に差しだしたのは、お揃いのベッドカバー。
文句も言わずに使ってくれたので、さらにくまのぬいぐるみを渡したのが今朝。
それが、こんな副産物を生むなんて。
「ああ、我慢できない」