王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
「起きちゃったんですね」
秘密の楽しみは終了なのか。残念。
久我が、抱いていたぬいぐるみを脇によけたことが、残念さに拍車をかける。
「……オマエ、平気なのか?」
黒の瞳が気遣わしげに見つめてきた。
先ほどの余韻が残っているのか、また鼓動が跳ねる。
「平気って、なにがですか?」
わからなくて首を傾げると、久我はゆっくり腕を伸ばしてきた。
一瞬、ためらうように静止した後、頬に触れてくる。
「倒れないんだな」
久我は顔をほころばせた。
「あっ、ホントだ」
指摘されてはじめて、身体がなんともないことに気がついた。
「近づいても大丈夫?」
「わからないけど、今は平気」
冷や汗もでないし、目の前が暗くもならない。
もしかして、苦手を克服できたのだろうか。
「治ったのかも。そうなら、もう久我さんにベッドに運んでもらわなくてもよくなりますね」
これで迷惑をかけずにすむ。
にっこり微笑むと、久我は、思いだしたとばかりに起きあがった。
「オマエ、寮のやつらにその話をしたか?」