王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「その話?」

 綾菜は再び首を傾げる。

 通じないことに苛だったのか、久我はがしがしと頭を掻いた。

「だから、俺がオマエを、その……、ベッドに運んでいるとか……」

「あっ、話しましたよ。いつもベッドに運んでもらって、とてもお世話になっているって」

 もしかして、誰かに褒められたりしたのかもしれない。いい話は、やはりみんなにしておくものだ。

「オマエな……。ま、いいんだけどさ」

「やっぱり、誰かに褒められたんですね。あとでもっと広めておきます」

「オマエ……。どうやったらその発想になるんだ?」

 久我はぐいっと距離を詰めてきた。

 絡む視線を、逸らしたいような逸らしたくないような。妙にくすぐったい感覚が湧いた。

 絵本の王子として見ていた気分が抜けていないのかもしれない。

「えっ? いい人だとみんなに思われたら、久我さんもうれしいかなと……」

 久我は参ったとばかりに頭を振っている。

 まずいことでも言っただろうか。
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