王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~
「別にいいんだけどさ。俺が毎日オマエをベッドに押し倒しているっていう噂が流れてる」
「押し倒す? 私は押し倒されてはいませんよ。誰がそんなでまかせを言ったんでしょう」
綾菜にしてみればごく素直な疑問。
しかし久我は、がっくりと肩を落とした。
「俺、東久保がなんでお前にイラつくのか、よーくわかった……」
「えっ、知っているなら教えてください。私、理佳ちゃんともっと仲良くなりたいんです」
久我は綾菜と実のある会話を諦めたようだ。全く相手をせずにひとりごちる。
「さっきも遠慮なしに、ぺたぺたぺたぺた触ってくるし。もう少しでヤバいとこだった」
「ぺたぺた?」
綾菜は自分の行動を振りかえった。
必要以上にべたべたすることを理佳は嫌う。理佳の名をだしたということは、久我も同じ気持ちなのかもしれない。
「……ゴメンなさい。寝ている姿が可愛くて触っちゃいました。理佳ちゃんも触ると怒るんです。久我さんも嫌でしたよね?」
反省の気持ちをたっぷりこめて、久我を見あげる。
いつも理佳にやめろと言われている必殺の上目使いになっていることには、全く気づかなかった。