王子様はルームメート~イケメン彼氏とドキドキ寮生活~

「実地って…。えっ?」

 肩にくるりと腕が回されたと思った瞬間、天地がひっくり返る。

 天井のレリーフが目に入って、ようやくベッドの上で仰向けにされたことを理解した。

「オマエ、可愛いものには触りたくなるんだろう?」

「はい。どうしても撫でて確かめたくなるんです」

「……俺も、同じ」

 綾菜の髪に久我の手が伸ばされる。

「な、に?」

 ごつごつした大きな手が何度も撫でていく。

 心臓が、おかしい。マラソンをしたあとのように大きくて速いリズムを刻んでいる。

 髪を梳く手は、甘やかそうとしているように感じるのに、リラックスするどころか身体に力が入ってしまう。

「その目、反則」

 その目と言われても、今、自分がどんな表情をしているかもわからない。

 ただ、胸が苦しすぎて、瞳が潤んでしまっているだろうことはわかる。

「マジ、少し自覚しろ。あんまり無防備だと閉じこめたくなる」

 久我は綾菜の顔に指を滑らせた。瞼から鼻、頬へと確認するように触れていく。

「……私、もう……ムリ」
< 51 / 191 >

この作品をシェア

pagetop