色×iro~素顔のままで~

ローズの誘い

     ⭐

ミストラルの、目下最後のライブ。

あたしはトモエに一緒に来てもらった。

そして、いきなりはぐれてる。

一緒に観たいのに。

探し回って、やっと見つけた。

「トモ...」

声が止まる。

すぐそばに連がいる。

とっても親しげに。

そうだった...。

ズキズキしながら、ホールに独りで入る。

トモエに会えないまま、ミストラルのライブが始まってしまう。

やっぱり、曲も演奏も、好きだ。

何より、イッセーさんの歌い方と、声が、いい。

この位置で、観てるのがちょうどよかったんだ。

しばらく見られないのかと思うと、泣けてくる。

最後の曲が終わりかけると、今日が最後だってわかってる人たちが、ステージに押し掛けた。

手に手に、花を持っている。

ミストラルのメンバーが、演奏を抜けながら、一つづつ、丁寧に受け取ってて...

「やっと見つけた。ほら、スイも行くのよ」

トモエの声がして、背中を押された。

手に、一本の薔薇の花を持たされて。

「ほらほら、イッセーによ」

押し出されて、イッセーの前に出る。

イッセーに渡したい人は、あたしで、最後のようだ。

イッセーがこっちを見て、手を伸ばす。

あたしも持たされた深紅の花を、差し出す。

...と、








< 137 / 141 >

この作品をシェア

pagetop