色×iro~素顔のままで~
「今のとこ、よかったね」
演奏が終わっても、呆然としてると、トモエが言った。
「うん」
それしか言えないでいると、
「気に入ったんでしょう?」
ニンマリ笑われた。
「『ミストラル』っていうみたい。また、観に来たいね」
そうか、ミストラル。
「ヴォーカルの子はイッセーだっけ?かわいかったね」
「うん」
「惚れちゃったんでしょう。あたし、初めて、人が『一目惚れをする瞬間』を目の前で見ちゃったよ」
あたしは、自分の顔が赤くなるのがわかった。
冷静に否定すればいいものを、私の反応は裏切ってこれ以上ないくらいの肯定をしてしまっている。
「いや、羨ましい。頑張れ、スイちゃん」
「頑張れって...そうだね、ライブチェックして、毎回見に来る」
「それだけ―?ま、いいか。とりあえずはそれで」
もっと何か言いたそうに見えたけど。
「とりあえずじゃなくて、それが限界です」
「そうか、そうなんだ。スイってもうちょっと、強気な子だと思ってたな。
連君のこともそうだけど、意外に気弱で、」
いやいや、そこで連が出てくるのはおかしいから。
「もっとぐいぐい押しまくるタイプを期待してたのにな。まあいいわ。もうちょっと見守っててあげるわ」