【短編】七日間の天使
 背格好も髪質も、僕と彼はそっくりだった。

 残念ながら彼の方がイケメンだけど。

 でも大きく違うのはその瞳の色だけ。

 だからこそソラは僕になつき、「スギハラさん」と呼び、僕には無い青を懐かしんで空を眺めていたのかもしれない。


 「上がって、下さい…」

 やっとの思いで絞り出した声は想像以上に小さかった。

 杉原さんを引き連れてダイニングに戻ると、ソラは朝食を終えていた。

 「ソラ、」

 いつものように声を掛けると、彼女は笑顔で顔を上げた。

 そして、僕の隣に立つ彼を見て大きく目を見開いた。


 「彩音…」

 杉原さんが名を呼ぶ。

 アヤネ―ずっと知りたかった、ソラの本名。

 彼女を呼ぶ杉原さんの声は愛しさと優しさで満ちていた。

 勝てないな…直感的にそう感じて、そんな事を考えた自分に自嘲する。


 立ち上がりフラフラと近付いてきたソラは、大きく見開いた瞳からポロポロと涙を流していた。

 「私が分かるかい?」

 そう尋ねる杉原さんに頷くと、ソラは涙を拭って微笑んだ。

 「リ、オン…」


 杉原さんはソラ…否、彩音さんを抱き締めた。
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