抱えたキセキ、


「おっはよー月那!」
「あはよ」
「朝からテンション低いですなぁ」
「アンタのテンションが異常なの」


教室に着いて、まず最初に声をかけてくれるのは、親友の高梨亞未。
一応、小さい時から一緒に居るし、家族ぐるみで仲が良い。


「……亞未アンタ日直だよね?」

ふと黒板に目をやると、高梨亞未と名前が書かれていた。

「オーマイガーっ!忘れてた!!職員室行ってきます!」
「行ってらっしゃい…」


ガララッと勢い良く扉を開けて教室を飛び出た亞未
「どいたどいたぁ!」と大声を出しながら生徒の間を縫っていく。

そんな亞未を横目で見ながら自分の席に着く。


窓側の、一番後ろの席。

「…おはよ」
「はよ」
「暗いねぇ」
「おめぇに言われたくねぇ」
「私も人の事言えないね…」

席について一番最初に話す奴は、前の席の


塚本健太。


「お前も朝っぱらからよくあんな奴と一緒に居れるな」
「幼稚園からだし。もう慣れた」
「ふーん、そっか」
「うん」


塚本健太は、俗に言う完璧すぎる人間。
欠点が一つもないんじゃないかと思う。

眉目秀麗という言葉を具現化したような綺麗な顔付き。おまけに小さい
容姿端麗だし、頭脳明晰、運動神経もいい。
あたしとは真逆だ。


それに、


龍聖に、すごく似ている。
声も体も指も髪も…
全部。

龍聖を塚本に重ねているあたしは、まだちゃんと過去と決別できてない。


「……前から思ってたんだけどさ、」
「なに?」
「なんであたしと喋る時、あたしの方向かないの?」
「んー…何でだと思う?」
「質問を質問で返さないでください」
「確かに」


そう言って、鼻で笑う。


「…馬鹿にしてる?」
「馬鹿をさらに馬鹿にしたって、可哀想なだけでしょ?」


そう言って席を立つと、髪が靡いて、柑橘系の爽やかな香りがした。


「ムカつく…」
「んーごめん。じゃ」


そのまま教室を出ていった。


「……変な奴」


たけ兄の次に不思議な人だとおもう。
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