言い訳
 後悔に苛まれ今すぐここで膝を折って崩れ落ちたくなる衝動を必死にこらえていると、中村はそんなあたしを掬い上げるように、
「そっか。何にせよサンキューな」
と言って笑った。
 (わ……。)
 あたしの胸が不意にぐっと詰まった。
 やばいあたし今顔赤いかも。
 全身の体温が上昇していくのを感じて、あたしは思わず顔を伏せた。
 あたしはコイツの笑顔に滅法弱い。こういうときあたしはコイツが好きなんだなぁと自覚させられる。明るくて優しい中村が好きだ。だからこそ、こんな面倒な片付けだって真剣にやれた。
 不意打ちの笑顔に加えて、中村は「予定より早く終わったのもひょっとして石原のお陰かもな」とかいうから、あたしは顔を上げるタイミングを完全に失ってしまった。

  *         *         *




< 4 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop