言い訳
 中村によると、つまりこういうことらしい。昨日の放課後にクラス全員が集まって、今日の打ち上げの打ち合わせをしていた時に委員長が出した「会場までは遠いので明日は全員チャリで」という意見が満場一致で可決された……らしい。
「らしい」というのはあたしがその時に眠っていた為であり、うっかり自転車を忘れてしまった由縁である。

 何はともあれ、要するに会場までは時間がかかる。そこで中村はあたしを自転車に乗せて会場へ行くことを提案してきた。
けどだからってそんなことになったらあたしは心臓止まるか呼吸困難になるかして、死んでしまいかねない。
 だってあたしみたいな男女が2ケツなんて恥ずかしいよね!?
 そう思う心があたしにストップをかける。
 ていうか2ケツで呼吸困難なんて笑えないっつーの!
「とにかくあたしは歩いていくから」
 あたしは半ば話を打ち切るように言った。
 そう言ってから可愛くないことを言ってしまったと少し後悔した。思わず小さく舌打ちをする。
 普通の女の子ならここで「乗せて」と言えるんだろう。けどあたしは生憎そんなカワイイ女の子じゃなかった。
 でもさぁ、と中村。
「んなこと言ってっと打ち上げ終わるぞ」
そう言われると弱い。あたしは思わず言葉に詰まった。
「う……確かにそうなんだけど、でもやっぱりちょっと……」
「お前なぁ……」
それでも乗るとは言わないあたしに、中村は長いため息を吐いた。
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