お姫様は桃太郎?!
言って玄関を指すと同時に、今度はリビングに駆けて行く袁次。
お母さんにも見せるらしい。
慌ててその後を追うと、リビングからは楽しそうな声が聞こえてきた。
「あらあら、マシロちゃんたらこんなに汚れちゃって」
「姉ちゃんにはただの犬って言っといたけど…」
「桃華にはもうばらして大丈夫」
「そうなの?」
少し、いや、かなり嫌な予感がする。
このままリビングに入らず部屋に引き返した方がいいと、本能が言っていた。
でも真相が知りたくて、私は二人と一匹のいる未知なる空間に足を踏み入れた。
私がリビングに現れると、皆は一斉に私を見た。
意識を取り戻したらしい砂で汚れているマシロは、クリッとした瞳を輝かせて袁次の手からピョイと離れた。
私の前に来て、そして小さい尻尾を千切れんばかりに振った。
『シャンプーして欲しいっス』
「嫌」
なんで私なのよ。
即答すると、袁次がひでーとか漏らした。
ひでーのはマシロと袁次とお母さんだっつの。
何かを知ってて、でもそれを私だけに隠してたんだもの。
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