お姫様は桃太郎?!
 
青年は白い歯を見せてクスリと笑った。

犬歯がよく目立つ。



「続きはまた今度っスね」

「は?続きって──…」



何の?と言おうとしたら、青年に頭を引き寄せられた。


頬に当たる柔らかい感触。

そして生暖かい、ヌルリとした感覚が頬を這った。


背筋がゾクリとする。



頭で考える前に、私の拳が青年に飛んだ。

そりゃもう無意識のうちに。



「うがっ」



そして見事に青年の頬を打った。

呻き声を上げながら、青年は床に転がる。



私は顔が火照るのを感じながら、ベッドの上に立った。



「てめっ何してくれとんのじゃァァァ!!」



私が殴った方の頬を擦りながら起きる青年。


まだ言い足りなくて、さらに罵声を浴びせようと口を開いた。

が、部屋に入ってきたお母さんと小猿に邪魔される。



「アラ?どうしたの?」



場を見渡して、そして驚いたような声をあげたのはお母さん。



そりゃ驚くよね。

娘が肩を上下させながら、赤面してベッドの上に立ってて。

その目前の床に、頬を押さえた青年がいるんだもん。


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