お姫様は桃太郎?!
 


「あと一分だな…でもいいか。終わり〜」


適当な先生のお陰でちょっと早く授業が終わった。


先生有難う。
さっきは怪獣扱いしてごめん。
今度は悪い奴等にとりつかれた事にしとくよ。



さぁ帰ろうとしたら、友達の千尋(チヒロ)がやって来た。


「やっぱり部活入らないの?」

「これ以上ムキムキになったら嫌だもん」


千尋はショートヘアの、とても活発で才色兼備な明るい子だ。

運動部をいくつも掛け持ちしている。

千尋には一つ上の兄がいて、この学校の生徒会長をしている。

家庭環境も申し分無い、パーフェクト人間だ。



忙しい彼女に別れを告げ、私は帰路についた。

私の家は普通よりも少し小汚ない、社宅として提供されたアパートの七階である。


専業主婦である母は毎日家にいる。


弟の袁次(エンジ)は中学三年生でサッカー部に所属していた。

もう受験生なので引退したのだが、私の通う学校に推薦で入学が決まっているらしい。

だからラストスパートをかけるはずの秋でも、サッカー部に顔を出しているのだ。


父は単身赴任中で、月に2、3回帰ってくるかの状態だ。



まぁ、その辺にいる普通の家庭だよね、うん。


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