お姫様は桃太郎?!
千尋に別れを告げると、お兄さんは三年生の下駄箱へ行った。
私は緊張の糸が切れた。
小さく息をもらす。
「ゴメンね千尋!」
「ん?」
「お兄ちゃんが…」
千尋は慌てた様子で私に謝った。
私が以前、千尋のお兄さんの事が苦手だと話した事があるからだ。
さっきの出来事で、さらに苦手になったと勘違いしたらしい。
私は千尋に笑いかけて、靴を履き替えた。
「昨日の課題みせてちょー」
「もー!桃華ったら〜」
でへへとえげつない笑みを千尋に見せて、二人で教室に向かった。
途中、私の鞄がいつもより大きい事に気付いた千尋。
首を傾げて、鞄を指す。
「その鞄どうしたの?」
「え、いや、ちょっとね…」
苦笑いを浮かべる事しか、私には出来なかった。
鞄を重くしているその正体は、タッパに散々詰め込まれた団子だ。
母曰く、いつ雉が現れるか分からないとの事。
相手は多分人形で、団子を食べさせたら雉の姿になるんだとか。
だから団子は常備しろと言われ、鞄に入れられる始末。
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