敬遠投手
敬遠投手
「良いよな、いつも敬遠するだけで給料がもらえて。」
敬遠投手と言われる仁藤は反論が出来なかった。
ただ、なんだかそう言われて妙に悔しかった。

ブルペンに入った仁藤はさっき言われた言葉が悔しく、
肩慣らしのマウンドで思いっきり投げた。
ブルペン捕手の川崎が言った。
「おい!どうしたんだよ!良い球来てるじゃねぇか。」
そう言うと仁藤の傍に駆け寄ってきた。
仁藤はさっきチームメイトが言った件を話した。
「なるほどな…それで、気持ちが入ってたんだな。素直でいいじゃねぇか?今日なら勝負しても案外面白いかもしれないゼ。」
「勝負…?敬遠投手なのにか?」
「このまま敬遠投手で終わりたいのか?男なら勝負してみろよ。別に敬遠投手になるためにプロ野球に入ってきたんじゃないだろ?そもそも、敬遠なんてのは逃げだ。ファンだって高い入場料払って、そんなの見たくないだろ。見たいのはワクワク、ドキドキする瞬間じゃねえのか?」
そう言われて仁藤は吹っ切れた。
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop