【短編】ありふれたメロディ


「こ、これ。今度の土曜に一緒にどうですか?」

握り締めてくしゃくしゃになってしまった青いチケットを差し出す。

一秒?二秒?いや、十秒ぐらい経ったかな?

右手にふわっと柔らかい手が重なった。

「うん、良いよ。ちょうど土曜はバイト休みだし」

笑ってチケットを受け取ってくれた菜月さん。



オレはぽけーっとしながら店を出る。

「……よ、よっしゃーーーーっ!!」

店の前で思いっきりガッツポーズを取るオレを、通りすがりのおばちゃんが笑っていた。

やばい、やばい、やばい。

まじで嬉しい。陵、オレやったよ……

って、この喜びを誰に伝えたいですか?でまず真っ先に陵が出てきた自分に呆れた。



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