【短編】ありふれたメロディ
そして土曜日。
天気予報では曇りなんて言ってたけど、今のオレの気持ちと同じ快晴
動物園の前でオレは菜月さんを待っていた。
待ち合わせは10:30。
ただ今10:05。
「我ながら早すぎだろう、これ」
なんて自分で呆れていると、近づいてくる足音がした。
「おはよー優太くん」
「え、菜月さん何で?」
待ち合わせよりも20分も早く現れた菜月さんに驚く。
「何でって優太くんが誘ってくれたんじゃん」
スカートに白いシャツ、灰色のカーディガン。
普段着って初めて見るけど、可愛い。
「いや、だって、こんなに早くに来ると思わなくて」
「あー私、楽しみなことがある日って眠れなくて、早くに来ちゃうんだよね」
何気なく言った菜月さんの一言で、身体がふわって浮きそうになるくらい幸せになる。
オレと同じ気持ちなんだ。
楽しみにしてくれてたんだ、良かった。
良かった。
「じゃ、入りますか?」
「は、はい」
2人で並んで入る動物園は、子供の頃に家族で並んで入った時とは違って見えた。