【短編】ありふれたメロディ


そして土曜日。

天気予報では曇りなんて言ってたけど、今のオレの気持ちと同じ快晴


動物園の前でオレは菜月さんを待っていた。

待ち合わせは10:30。

ただ今10:05。

「我ながら早すぎだろう、これ」

なんて自分で呆れていると、近づいてくる足音がした。

「おはよー優太くん」

「え、菜月さん何で?」

待ち合わせよりも20分も早く現れた菜月さんに驚く。

「何でって優太くんが誘ってくれたんじゃん」

スカートに白いシャツ、灰色のカーディガン。

普段着って初めて見るけど、可愛い。

「いや、だって、こんなに早くに来ると思わなくて」

「あー私、楽しみなことがある日って眠れなくて、早くに来ちゃうんだよね」

何気なく言った菜月さんの一言で、身体がふわって浮きそうになるくらい幸せになる。

オレと同じ気持ちなんだ。

楽しみにしてくれてたんだ、良かった。

良かった。

「じゃ、入りますか?」

「は、はい」

2人で並んで入る動物園は、子供の頃に家族で並んで入った時とは違って見えた。




< 13 / 34 >

この作品をシェア

pagetop