【短編】ありふれたメロディ
「はー、楽しかったぁ」
夕方になり閉園の音楽と共に動物園を出た。
オレは菜月さんの二歩後を歩いている。
オレンジ色に染められた雲を眺めて、一瞬だけど違う世界にいってしまっていた。
「……い、おーい、優太くーん?」
「へっ?あ、わわっ」
気付くと目の前に菜月さんの顔があって、オレは無意識に下がってしまった。
そんなオレを見て、ほんのちょっとだけ菜月さんが悲しそうな顔をした気がした。
「動物園楽しかったね。誘ってくれてありがとう」
「あ、いえ、こちらこそ来てくれてありがとうございました」
にこっと笑う菜月さん。
さっきのはオレの勘違いだったのかな?