【短編】ありふれたメロディ
昔からあるパン屋。
朝通りかかると芳ばしい香りが漂ってくる。
そこに2ヶ月くらい前から新しいバイトの女の子が入っていた。
名前は園田菜月(そのだなつき)さん、23歳。
名前と歳を聞き出すまでに2週間近くも通った。
セミロングで柔らかい茶色の髪。
美人かって言われたらそうじゃないのかもしれないんだけど、でも可愛い。
お会計の時にふりまく笑顔が、もうなんていうか、たまらない。
「あ、優太くん。いってらっしゃい」
店の玄関を掃除していた菜月さんが、オレに気付いて手を振ってくれた。
オレは小さく手を振り返す。
オレ、菜月さんが好きだ。