【短編】ありふれたメロディ
そして陵から思いがけない提案が飛び出す。
「そこにさ菜月さん呼んじゃえば良いじゃん」
「えっ……」
菜月さんて単語が出てくると何故か一瞬オレの頭は動かなくなる。
「そっか」
そうだよな。
何で今まで思い付きもしなかったんだろうか。
「ライブに呼んで格好良い方の優太を見てもらおうぜ。菜月さん惚れるぜ?きっと」
にかっと笑う陵。
「お、おぉ、おお!そうする、そうするよ」
この一瞬だけでオレは菜月さんをライブに呼んで、演奏をきいてもらって、「優太くん格好良かったよ」って言われるまでを完璧に想像していた。
「よし、そうと決まったら今日の帰りが勝負だな」
「うん、頑張るよ…………ってかさっき「格好良い方のオレ」って言わなかった?それじゃあまるで菜月さんの前では「格好悪い方のオレ」しか見せてないみたいじゃないか!」
頭に血が上ったオレを見ながら陵が笑う。
「ははは。うん、そう言ったつもり」