【短編】ありふれたメロディ
キキーッ。
ブレーキ音が辺りに響き渡る。
「菜月さん……菜月さん!」
いつもの坂道を下ったパン屋。
今日は日曜日
「はは、定休日って……分かってたはずじゃんかよ。居ないことくらいさ」
分厚いシャッターが閉められ、真ん中に定休日と掛かれた紙が貼ってあった。
分かってた。
分かってたはずだったんだ……でも
「うっ……くそ、くそぉ」
地面に膝をついて、思い切りシャッターを殴った。
赤くなった拳をもう一度シャッターに叩きつけようとした時だった。
やわらかな手が、振り上げた拳を包み込んだ。