【短編】ありふれたメロディ

ライブハウスへと戻ったオレは勝手に飛び出したことで、スタッフさんにこっぴどく叱られた。

出番になり当初の予定とは違う曲を一つ入れた。

「旅立つ友達に贈る歌を作りました。その人は今、神奈川県に向かう車でこの曲を聞いてくれていると思います。」

お世辞にも良い曲ではないけれど、オレのこの3ヶ月の想いが詰まった曲だから。

わがままを言って曲目に入れてもらった。

オレもメンバーも分かっていた。

この曲を、完成度の低いこの曲を入れることで審査にどんな影響が出るのかを。

「それでは聞いてください『ありふれたメロディ』」








選考会は3位に終わった。

1週間も学校を休んでしまったことは、バンドのせいだとされて、それから3ヶ月の間オレはバンドを禁止にされた。

あれからパン屋にはまた新しいバイトの女の子が入った。

片瀬亜由美さん。21歳。

聞き出すまでには1週間とかからなかったけど、何故だかあれだけ美味しかったパンが

そこまで美味しいと感じることがなくなっていたんだ。







ありふれたメロディが

いつまでも

あなたの背中を押しますように






【ありふれたメロディ】fine.



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