【短編】ありふれたメロディ

あっちってのは勿論、菜月さんのこと。

恋愛の話もよく陵とはする。

「……まじ可愛い」

「いや、可愛いかどうかは聞いてねぇ」

ごもっともなこと言いやがって。

「チケット、まだ渡せてないの?」

オレの手提げの内ポケットに眠る二枚のチケット。

「……うん」

「そか」

そう言って陵は優しく笑った。

で、その天使の様な笑顔のまま言う。

「歌ってる時の優太は堂々としていて格好良いのに、普段の優太はなよなよしてて格好悪いよな」

うぐ。

この男、ぐさりと刺さる言葉をひょうひょうと。

「だって、もし断られたら……」



< 7 / 34 >

この作品をシェア

pagetop