【短編】ありふれたメロディ
あっちってのは勿論、菜月さんのこと。
恋愛の話もよく陵とはする。
「……まじ可愛い」
「いや、可愛いかどうかは聞いてねぇ」
ごもっともなこと言いやがって。
「チケット、まだ渡せてないの?」
オレの手提げの内ポケットに眠る二枚のチケット。
「……うん」
「そか」
そう言って陵は優しく笑った。
で、その天使の様な笑顔のまま言う。
「歌ってる時の優太は堂々としていて格好良いのに、普段の優太はなよなよしてて格好悪いよな」
うぐ。
この男、ぐさりと刺さる言葉をひょうひょうと。
「だって、もし断られたら……」