【短編】貴方の背中
「……まあ、顔を上げて座りたまえ」


重苦しかった応接間の空気が、少しだけ軽くなる。
頭を上げて椅子に座る。


「失礼します」


座るや否や、朝日奈部長が紙袋から包みを出して前に出す。


「いやいや、下げて頂けませんか? 言う程怒っちゃいませんから」


突然笑顔になった斎藤社長が、片手で突き返そうとする。


「そうは言われましても、折角ですから皆さんで召し上がってください」
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