【短編】貴方の背中
静かに玄関のドアが閉まり、鍵を掛ける音が“カチンッ”と控え目に鳴る。


時計を見上げると、日付の変わる少し前。いつもと同じタイミング。


“ふぅー”


訳も分からず、何故かため息が出る。


身体にはまだ彼が残っていて、布団にもまだ温もりと香りが、まるで彼がそこに居るかのように残っている。


それを抱きしめるように布団に潜り込む。


寂しさを感じている自分が嫌になる。割り切ると決めたはずなのに。


現実は割り切れないことばかりだ。
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