【短編】貴方の背中
笑いが堪えられないと言わんばかりに、目尻に皺を刻みながらノブに手を掛け、一気にドアを開けた。


「どうぞ」


中を覗き込めば、数々の淡い光の粒。微かに聞こえるくらいのボリュームで流れているのは、ジャズ?
ここが人の住む場所ではないのは、誰が見ても明らかだった。


「“Candle”って名前のバーだよ。びっくりしたんだろ?」


朝日奈部長に視線を向ける。
……まだ笑っていた。
見つめていた口が開く。


「連れ込まれるかも、って思った?」
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