【短編】貴方の背中
朝日奈部長は何も聞かない。
ただ横で静かに飲んでいる。私から話し出すのを待つかのように。


優しくされると、やっぱり、私は女なんだなって思い知らされる。


あっ!
いま分かった。


真っ直ぐキャンドルの炎を見つめる朝日奈部長に、そっと話し掛ける。


「あの〜。さっきの話……」


「ん?」


ロックグラスを持ち上げ、軽く回す。グラスの中で琥珀色の液体が、光を通し煌めく。


それを見つめていた目が、私に向けられる。
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