【短編】貴方の背中
慌てて部屋着を着込み、まだ生乾きの髪を気にする。
でも、乾かしている時間が勿体ない。


バスタオルを頭から被り、丁寧に拭きながら廊下に出た。
リビングの見えるところに、姿はなく。


何の気無しに、玄関の方を振り返った。


髪の毛を拭く手が止まる。


「……ひな、た?」


紛れも無い。目の前には日向が立っていた。昔と変わらない、その笑顔で私の前にいた。


「久しぶり、アヤ。髪、伸びたね」


日向の手が、私の目の前を通り過ぎる。
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