【短編】貴方の背中
ドアノブに手を掛けたままの体勢で、声が聞こえてくる。


「アヤ……、悪かった。番号もアドレスも変わってない。連絡、待ってるから」


返事も聞かずに、それだけを言い残してドアが閉まった。


どうして……。


握りしめていたタオルに、雫が落ちた。


どうしていまさら謝ったりするの?
徐々にだけど、薄まってきてたのに。


あなたの優しさを……、思い出させないで。
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