【短編】貴方の背中
「そうかなあ」


目を逸らし、答えながら立ち上がる。


「あっ、朝日奈部長おかわりいかがですか?」


気持ちを切り替え、笑顔を作った。


「いや、もういいよ。それより、何か……あったのか? 今日の君は」
 「何もないよ」


咄嗟に答えてしまった。


「何も、ない」


もうダメ。
感情の振り幅が大きすぎて、もう、抑え切れない。
ついに、我慢していたものが溢れ出す。


“スウッ”と頬の曲線に合わせて流れる涙。顎で雫を作り、落ちた床で飛び散った。
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