【短編】貴方の背中
息を止めていたら、死んでしまうくらいの長い沈黙があった。


本当に息を止めていたかもしれない。それぐらいに深く息を吸い込み、朝日奈部長は立ち上がった。


「ちょっと待っててくれ」


携帯を片手に玄関に向かって歩いていく。
ドアの閉まる音がする。


きっと、奥さんに電話をするのだろう。何かしらの理由を付けて、今日は帰れないと……。


 “罪悪感”


また、優しさに甘え。
それだけでなく、朝日奈部長の家庭にまで迷惑を掛けるの?
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