【短編】貴方の背中
「何の話ですか?」


私の問い掛けを聞いているのか、いないのか、真っ直ぐ前を見つめたまま独白を続ける朝日奈部長。


「もう、別れてから。……いや、逃げられてから二年が経つ」


朝日奈部長の自嘲気味な笑みが浮かぶ。


「子供を残してさ、突然に。会社のみんなには、とてもじゃないけど話せなかった」


「すまない。君が、そんなに苦しんでいたことに気付かないで」


ここに来て初めて私を見た朝日奈部長は、とても、悲しい顔をしていた。
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