【短編】貴方の背中
なんで、じゃあなんで、いつも一緒にいてくれなかったの?
訳が分からないよ。


ただの遊びだから?
本気じゃないから?


「娘と約束していたんだ。“夜は十二時までに帰る、朝は一緒にご飯を食べる”ってさ」


「それなら、どうして教えてくれなかったの?」


朝日奈部長は、手に持ったグラスを揺らしながら覗き込んだ。
琥珀色をした液体が、波を作る。


「君に嫌われたくなかったからだよ。バツイチ子持ちなんて、知られたくなかったんだ」
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