【短編】貴方の背中
「幸せを求めるなら、背中を追いかけるな。真正面から受け止めるんだ」


「はい」


声を震わせながらも、ニッコリと笑ってみせる。
髪の毛を、くしゃくしゃにされた。


「良い笑顔だ」


私を女に変えた笑顔で、そう言ってくれた。


“シモン、ここ俺にツケといて”バーテンダーに向かってそう言ったあと、背中を向けて歩き出した。


「じゃあな」


朝日奈部長は振り返らず、片手だけを上げて外に消えていった。
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