【短編】貴方の背中


もう、その背中を追いかけようとは思わない。


もう、寂しさは感じない。


飲み慣れないストレートに口を付けながら、携帯を取り出す。
周りに客がいないことを確認して、バーテンダーを見た。


シモンと呼ばれていた彼が、目を合わせ頷く。


もう、躊躇わない。
名前を探して発信ボタンを、押した。


耳に響く呼び出し音。


『はい』


「私だけど、まだこっちにいるの?」
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